エントロピー計はありません
Posted on 7月 2nd, 2014 by apj
Tokyo DD Clinicのページより。ツッコミどころは山ほどあるのですが、私が前期担当している専門必修科目の「物理化学I」の試験を控えていますので1点だけ。
メタトロンはロシア人科学者によって開発されたエントロピー測定機器です。
と書いてありますが、世の中に、エントロピー測定機器というものはありません。
エントロピーというのは、熱平衡状態に対して1つだけ決まる量です。特定の系のエントロピーは、S=S(U, V, N,…)のように示量変数の関数として表したときに、その系の熱力学的性質を全て表すことができます。この形の式をのことを基本関係式と呼ぶのは、講義で述べた通りです。
S(U, V, N)を決めるには、熱膨張係数、等温圧縮率、モル低圧比熱(これらは定数表に実測値が出ています)と、基準の状態での体積とエントロピーの値が必要です。さまざまに条件を変えて測定した3つの熱力学量の値を使って広い範囲でのS(U,V, N)を計算します。ごく一部の物質については、S(U, V, N)を1つの式で表すことができます。そうでないものについては、数表の形か、限られた条件での近似式でしかあらわせません。
幸いなことに、モルエントロピーは、さまざまな物質について既に求められています。定数表のエントロピーを使った計算方法と、エントロピーを決めるための計算方法について、試験前にもう一度ノートを見直しておくことをお薦めします。