日本トリムが無節操な件
産経WESTの記事より。
「インチキ水素水」ブログ、「中傷だ」と日本トリムが研究者提訴
研究者のブログに「インチキ水素水」と書かれ、自社製品の信用を傷つけられたとして、家庭用整水器大手の日本トリム(大阪市北区)が、水素の医学的効果を研究している元日本医科大教授の太田成男氏を相手取り、約4400万円の損害賠償と謝罪文掲載を求める訴訟を大阪地裁に起こしたことが13日、分かった。同日開かれた第1回口頭弁論で、太田氏側は請求棄却を求めた。
■「本物の水素水」と「インチキ水素水」…
訴状によると、太田氏は昨年12月、国民生活センターが容器入り水素水と生成器について行った商品テストの結果を受けて、自身の当時のブログに「本物の水素水とインチキ水素水」と題した文章を掲載。「容器入りの水素水では、10社製品中商品表記と同じ水素濃度のものは3社製品」のみだったとしてトリム社以外の3社の名前を記載した。
トリム社の製品で商品テストの対象となったのは生成器のみで、表示と同程度の水素濃度が確認されたが、ブログ掲載後の5日間で返品やキャンセルが計143台に上ったという。
トリム社側は太田氏について、テレビや新聞で水素に関するコメントをしており、知名度もあると指摘。「影響力の大きい太田氏の発言で製品の社会的評価が低下した」としている。
一方、太田氏側は答弁書で「『インチキ』という言葉はペットボトル入りの水素水に関する意見で、トリム社製品について述べたものではない。売り上げの減少とブログに何の因果関係もない」と反論している。
日本トリムは、水を軽く電気分解して作る飲料水製造装置を製造販売している会社である。
九州大農学部の白畑教授と組んで、電解水の穏やかな抗酸化作用を示す実験をし、日本トリムの技術者が白畑教授と共著で論文を発表した。その中で、抗酸化作用の原因物質として、白畑教授は「活性水素」という物質の存在を仮説として提案した。「活性水素」は、あくまでも実験結果を説明する作業仮説に過ぎなかったのだが、日本トリムは、活性水素の存在を九州大の農学部の教授が証明した、という内容の宣伝に利用した。当時、白畑教授は、活性水素=原子状水素、と主張していた。このため、電気分解してできる原子状水素の入った水、という宣伝を行う同業他社も多数出てくる結果になった。その後、白畑教授は、活性水素とは原子状水素ではなく、白金ナノ粒子に水素分子が吸着したものである、と主張を変えた。
研究が進んだ結果、主張を変えること自体はよくあることなのだけど、最初から仮説でしかなかったものを「実在を証明」という風評を流し、それに乗っかって商売したのは日本トリムである。当時は、白畑教授も、積極的にその風評を流すことに協力していた。
そうこうするうち、太田氏が始めた水素の生理作用や治療効果の研究が知られるようになった。活性水素じゃなくただの水素だということは知らんぷりして(BBRCに論文通すだけの知識のある研究者が社内に居れば、水の電気分解でできるものは水素ガスであることくらいとっくに知っていたはず)宣伝していたのに、太田氏の仕事が知られるようになったとたん、水素水製造装置として電解水を作る装置を売り出した。
ところがその水素水や水素ガスも、治療効果としての臨床試験は行われているが精度の高いものはまだ無く研究途上であり、健康な人に対する効果についての試験結果はない。つまり、健康な人向けに製品を売るということ自体が、現状では、水素水の「風評」に乗っかった商売であるといえる。
現在、訴訟資料の情報が無いのでなんとも言えないが、産経新聞の報道の通りなら、太田氏はペットボトルの水だけを対象にしてホンモノニセモノの評価をしており、装置を作っている日本トリムには何も言っていないように見える。しかも、国民生活センターの調査結果公表の直後であり、キャンセルの原因は太田氏のブログではなく国センの結果公表ではないかとも思える。
これまでさんざん「風評」を利用して、というか積極的に振りまいて商品を売っておいて、インチキ水素水論評の巻き添えを食らったからといって、信用を傷つけられたとはどの口が言うのか。無節操にもほどがある。
太田氏には、ずいぶん前に、水素水で商売する有象無象が出てくるに決まってるから用心するようにと伝えたが、逆に、積極的に水素水を売りたいのだという返事がきた。そのうち、水素サプリを積極的に推すようになった。今回の訴訟は馬鹿健康グッズ業界にどっぷり使った状態で他社製品を批判した結果なので、まあ仕方ない。ただ、国センのとばっちりを受けてるだけのようにも思える部分だけはちょっと気の毒ではある。
とはいえ訴訟資料は見たいので、もしここを見ていたら、連絡ください。資料公開ウチで取り扱います。> 太田氏