Macintoshで計測システムを作ろう

はじめに

 1990年代の初めの頃は、大学の研究室で計測器とパソコンをつなぐといえば、NECのPC-98シリーズにGPIBボードを入れるかシリアルを直接つなぐかであった。各種A/Dボードも市販されていて、そちらを使うこともあった。測定プログラムを作るにはDOS上でN88BASICやCを使うか、あるいはDISK BASIC(死語?)を使うかであった。しかし最近はDOS/VマシンやMacが増えてきてPC-98を新規購入することがほとんどなくなってきた。少なくとも私の関係する研究室ではそうである。
ワープロやお絵かきソフトの使い勝手は圧倒的にMacやWindowsの方がよいし、インターネットの利用にしてもツールが多いのはMacかWindowsである。同じWindowsを動かすならDOS/V機の方が安いし性能も上である。こうなると作業の大半がPC-98以外のマシンで済んでしまう。だからといってPC-98を捨てると計測ができないため捨てられないというのがその頃の状況だった。

 私は1994年にそれまでPC-98でやっていた測定をやめてMacで行うようにした。そのころは今ほどWindowsが動くマシンもMacも多くなかったし、PC98ももっと残るだろうと思っていた。それまでの蓄積を捨てて機種を変更した直接の理由はプログラムの保守に耐えられなくなったからである。実験をしていて疲れてくると測定プログラムの操作を間違えたりするので、防止策としてかなりユーザインターフェースを作り込んでいた。テキストベースのウィンドウやダイアログ管理ライブラリを自作し、それを使って計測プログラムを作るようにしていた。しかしプログラムの規模が大きくなると保守の手間がかかって仕方がない。本業はプログラムを使って計測をすること(そして論文を書くこと)なので、システム側でウィンドウの管理などユーザーインターフェースの基本的な部分を管理してもらわないとやってられない。この理由ではWindowsでも良かったしすでにPC-98ではWindowsを動かしていたのだが、NEC純正のGPIBボードのドライバをどう作ればよいか情報がまったく得られなかった。GPIBボードのROM内ルーチンをCで呼び出していたのだが、これをWindows環境でどうすればよいかわからなかった。DOS/V機が広まるちょっと前でそちらの情報も入手できなかった。たまたま同じ研究室にMacを計測に使おうとした人がいてインターフェースの購入について教えてもらえたことがMacを計測器とつなぐことになったきっかけである。ここでMacを使ったものだから、今に至るまでMacユーザをしている。

 Macを使いはじめて最初にしたことは、MPWをインストールして、Symantec C++ for MPWをインストールして、シェル環境でプログラムを書いてMakeを叩くことと、New Inside Macintoshのとりあえず必要な部分を買いそろえることだった。「使って極楽」をちっとも味わえず、「作って地獄」ばっかりだった。それでも、自分でウィンドウマネージャをメンテナンスしなくても良くなったし、作ったプログラムはMacライクで見栄えも良くなったのでそれなりに幸せになった。その後、開発環境をCodeWarriorにしたので統合環境でもっと楽になった。

 Macを選んだ最大のメリットは、ネットワーク接続が楽だったことである。学位論文の研究がデスマーチまっしぐらのときに、何の因果か研究室のメールサーバを立ち上げるはめに陥った。そのテスト用(っつーかほとんど役得というか)で、私は計算機センターのアカウントを使わせてもらえることになった。アカウントはスタッフしかもらえないことになっていたのだが、私の状況を知った隣の研究室の教授が指導教官に一言言ってくれたおかげでもらえることになった。私が使っているMacは、SCSIはGPIBインターフェース越しに計測器に接続され、LocalTalkは研究室内のMacやプリンタとつながり、EthernetはUTNetに接続という状態であった。実験をしているときに、計測器の積算ボタンを押して、データをため込んでいる間に速攻でセンターにtelnetしてメールの読み書きをしたり、ネットニュースを眺めたりして遊んでいた。タンパク質の水溶液の測定をしていたので、ブルックヘブンのprotein data bankから構造データをダウンロードして、おなじくfreeのviewerで分子をいろんな方向から眺めて、どういう論文にしようか考えていた。

 学部、修士、博士の各課程で所属した研究室では、Cでプログラムを組む人は見渡す限り居なかったし、ましてMacのプログラムを作る人など居なかったので、ほとんどの部分を独学でやったから、そのころ作って今も使っているプログラムは、実現の仕方が変になっているものもあるかもしれない。とにかく自分のやれる範囲でできたものを順次公開していくので、良いと思ったところだけ各自の判断でご自由にお使いください。また、もっといい方法を知っている人がいらっしゃいましたら、こそっとメールで教えてください。


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Y.Amo /
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