7.測定法方の選択について

 同軸ケーブルを用いた誘電率の測定は、まず周波数領域の測定でおこなわれた。しかし最近では時間領域の測定装置の性能が上がったため、どちらの方法をとっても感度に差はない。時間領域の測定の方が1台の装置で測定可能な周波数範囲が広く、測定系のインピーダンスの不整合も同時に直接観測することができるので、ケーブルの長さを変えるなどして測定に不都合な反射を取り除くことができる。フーリエ変換の際に周波数の対数を等間隔にするようにすれば、望むスペクトルを得ることができる。同軸ケーブルが使用できる範囲の誘電スペクトルの測定に限れば時間領域の測定を行う方が有利である。

 ミリ波帯の測定は、TDRでできる装置はまだない。ネットワークアナライザで利用できるものがあるのでカタログを見ていただきたい。

 TDRの場合は、1つのスペクトルを得るのに矩形波のパルスを繰り返し試料に加える。パルスが当たった瞬間は誘電分極に関係する応答が観測できるが、その後もずっと電圧がかかりっぱなしになるため、電気化学反応がからんでくるような試料には不適である。ネットワークアナライザなら、入力が正弦波なので、周波数が高ければ、電極表面で電気化学反応が進む前に電圧の方向が変わるため反応が進まず、それなりに誘電率が測定できることがある。

 なお、装置はHewlett-Packard社のものをおすすめする。一度、某国産機を使ったがひどいもので、校正して10分たたない間に高周波の信号が乱れてきた。Hewlett-Packard社のネットワークアナライザは、校正し連続運転してデータを記録したあと、翌朝見ると(部屋のエアコンを止めたため)さすがに波形が乱れていたが、そのまま連続運転しながらエアコンを入れてしばらくすると、前日の波形を再現した。安定性において、信頼できるのはHewlett-Packardの製品だと思う。ただしこの会社はなかなか値引きしてくれないが。


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Y.Amo /
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