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吉岡氏とのやりとりー3(2003/12/10)

 今度は返事が早かった。製品が売れてるかどうかについては,吉岡氏自身の主張によって既に議論の対象でなくなってるし,社会規範については議論はやめるということなので,水の効果を科学的に確認するという話が残ることになる。

 磁場で水が変わると主張するのは勝手だけど,その主張が既存の実験事実をどれだけ広い範囲でひっくり返すものかということを少しは考えて欲しい。もしそれが本当なら,磁場の強い方ではこれまでに行われたNMRの(特に生化学関係の)実験は全滅,病院のMRIの検査に重大な副作用の可能性を意味することになるし,磁場がそんなに強くない方では,どこの研究室でも使っているマグネティックスターラーでかき混ぜた溶液を使った実験は全部信用ならないということになる。もちろん,こんなことを支持する実験結果は皆無である。だからこそ,磁場で水が変わるという主張には,研究者を軒並み有無を言わさず納得させるだけの決定的な証拠が必要なのだ。

Delivered-To: apj@atom.phys.ocha.ac.jp
From: 健康と環境の神戸クラブ <kenkanko@post.nifty.jp>
To: "apj" <apj@atom.phys.ocha.ac.jp>
Subject: Re: ご質問への回答です
Date: Wed, 10 Dec 2003 16:42:31 +0900

天羽優子さま

>  当方のサイトを見て購入をやめる人というのは,商品説明に納得
> できなかったからわざわざウェブにアクセスして検索してあれこれ
> 調べた人ってことですよね。納得できれば即買いするでしょうし,
> 疑問を持たなければそもそもウェブで調べようとはしないはず。

疑問はなくても、いまどき、多くの人が一度はウェブを見て、
ほんとにある会社かどうか調べようとします。
グーグルで検索すると天羽さんのページに行ってしまいます。

>  普通の科学の世界では,新奇な効果があると主張する側が
> 科学的手続きに沿って,そのことを立証する責任があります。
> それをやって初めて追試の対象になります。
>  この場合,効果があると主張しているのは吉岡さんですから
> 立証責任は吉岡さんにあります。

自然現象については、別に論争をしているつもりはありません。
天羽さんが学んだことでは説明できない現象が起きている、
ほんの小さな工夫をしたことによって、思いがけず新しい現象が起きている
ということをお知らせしているのです。

私も一応、物理や化学を学びましたので、昨年までは
磁場を通っただけで水そのものが変わるとは思っていませんでした。
でも、変わるのです。

ですから、立証責任がどうのということではありません。
そのことに興味があるかどうか、ということです。
たとえば、磁場を通っただけで、水の界面活性があがる、
そのことは一応、実験によって計測されているわけですが、
実生活では、たとえばその水を風呂に張って
そこに油まみれの換気扇をつけておくと
油がみんなとれてぴかぴかになって、
そのあと浴槽も、すっと拭えばきれいになる、
という現象が起こっています。

興味がないのは、人それぞれですから、それでいいのですが、
現象にはいちいち興味がないと言って、現象を見ようともせずに、
カタログの片言隻語をあげつらうことは
けっして科学的な way of life はありません。

>  その,マイナスイオンカウンターそのものが,まだ標準すら
> 決まってなくて,どの測定器を使うかで値が違うということを
> 知っておっしゃってますか?

実は私も、マイナスイオン測定器が何を測定しているのか、
よくわかりません。
電荷を測っているともいいにくい感じがしています。
粒子としての電子ではなく、
もっと波動性のものが検出にかかっているのではないかと感じています。
測定値もバラバラですから、絶対値には意味がないと言っています。
でも、相対値には意味があるはずです。
何か、変化が起きているということを示しています。

また、私は、直接的にマイナスイオンの効果を言っているわけではありません。
水が変化し、いくつかの物性値が変化し、
一方で、効果がいろいろ現れてきている、ということです。
その因果関係については、さらに調べる必要があるでしょう。

一例として、創業以来数年間、悪臭に悩んでいた神戸の魚の処理プラントに、
今年の初めに、そういうことならこれが、、、と言って
大型の装置をつけて水を循環し、噴霧したところ、3日で臭いが収まりました。
私はこれは、悪臭を出す化学物質に対して、
水が電荷的な作用を発揮した結果だろうと考えています。
魚の悪臭のもとはアンモニア系のプラスイオンのようですから、
この場合は、その脱臭効果を「マイナスイオンの効果」と呼んでも、
あながち間違いではないだろうと思っています。

>  社名や製品名を発表した方が宣伝になるんじゃないですか。
> あなたのおっしゃる効果が確かなものであれば,今度は私が
> 実験で確認しましたという文書をウェブで公開することになる
> わけですからねぇ。

天羽さんのサイトに名が出ること自体を、メーカーは嫌っているようです。

>  ところが「実験条件を知る必要はありません。」とおっしゃる
> わけですから,これではもう最初から検討のしようもありません。

実験の正誤を検討してください、と頼んでいるわけではありません。
興味があるかどうか、ということです。
興味がある人は、すぐその水を入手して自分で確かめようとするだろう、
というのが、科学をなりわいとする人に対する、私の認識です。

>  で,ミラクルな効果がある,というデータも無いわけですね。
> データを持たずに「ミラクルな効果がある」と主張して商品を販売するのは
> 単なる詐欺ということになりますね。

ミラクルな効果があるとは言っていません。
そんなことを言うと法律違反になります。
データがあっても法律違反になるのですよ、この国では。
ですから、統計調査をすることで、わざわざミラクルと言わなくても
誰の目にも明らかになる、と言っているのです。

> 分子単位で振る舞ってるんですよ。そうすると,どういう水を飲んだと
> しても,取り込まれるときは水分子そのものの性質が効いてくるわけ
> です。分子単位で考えると,どういう水であったかということは無関係
> ですよね。
>  じゃあ,水に何か効果があるとしたらそれはどこからくるかというと,
> 水に溶けている物質の効果しかない。だから,ミラクルな効果を示す
> 物質が溶けていれば,その分の効果はあるでしょうけど,それは成分の
> 効果であって水の効果じゃないですから。

私は、おっしゃるように、分子単位で考えています。
H2Oの一つ一つの分子の構造そのものに変化が起きていると考えています。

>  細胞の恒常性の維持というのは,通常の水の性質が前提になって
> いると考えてよいのでは。だから,それを乱すような水は負担になる
> はずですよ。水の出入りの速度を上げると,その分だけ余分なエネルギー
> を消費することになるわけですから。

でも、栄養補給と老廃物の排出は早くなるでしょう。

通常の水とはどういう水か、なかなか難しいですね。
地球に存在する水は地球磁場の影響を受けています。
その地球磁場は数千年数万年で大きく変動しています。
すると、地表の水が切る磁力線の数は、時代によって違うことになります。
時代によっては、ちょっと磁場を通した方が生命活動にとっていい水になる、
という、そういう時代もありそうですね。

社会規範については、議論しても意味がないようですので、やめます。

吉岡英介

 これに対する返事は以下の通り。私が書いた部分は例によって改行位置を修正しています。物理と化学を学んだと主張しているのにどうして実験条件を最初に示さないのかが謎です。アンタ本当に学んだのかと問い詰めたい。

吉岡様

At 4:42 PM +0900 03.12.10, 健康と環境の神戸クラブ wrote:
>天羽さんが学んだことでは説明できない現象が起きている、
>ほんの小さな工夫をしたことによって、思いがけず新しい現象が起きている
>ということをお知らせしているのです。

 そりゃ,何を私に知らせてこようが吉岡さんの自由ですが,説明できない現象とやらが科学的にきっちり確認されるまでは事実であるとみなさないのが私の姿勢です。

>ですから、立証責任がどうのということではありません。
>そのことに興味があるかどうか、ということです。

 新奇な現象が本物なら興味があります。が,思い込みや錯覚で「新発見しました」と主張する人が後をたたないのも事実です。ですから,新発見をしたのならしたで,通常の科学のルートに載せて,誰でも追試出来る状態でまずは広めてください。論文は世界中どこにでも投稿できるし,査読者も世界中にいますよ。
 「言ってるだけ」の状態に振り回されるのはご免です。こちらが投入できるリソースは限られていますので。

>たとえば、磁場を通っただけで、水の界面活性があがる、
>そのことは一応、実験によって計測されているわけですが、
>実生活では、たとえばその水を風呂に張って
>そこに油まみれの換気扇をつけておくと
>油がみんなとれてぴかぴかになって、
>そのあと浴槽も、すっと拭えばきれいになる、
>という現象が起こっています。

 これが事実なら,飲料水には適さないだろうということが容易に推定されますね。人の細胞膜は「油」としての性質を持ちますので細胞膜を傷つける危険性がないことを証明してからでないと,とても怖くて飲めませんね。

>興味がないのは、人それぞれですから、それでいいのですが、
>現象にはいちいち興味がないと言って、現象を見ようともせずに、
>カタログの片言隻語をあげつらうことは
>けっして科学的な way of life はありません。

 立証責任を果たさずに,現状の科学知識とまったく相いれない話が宣伝を通して広まることは,我々にとって損害が生じるので,変な宣伝内容はどこがどう変か,現状の科学とどう矛盾するのか,立証は本当になされているのか,といった観点から,これからも指摘を続けます。
 ただし,私が指摘した内容について,実はそちらの発見が正しいということが,たとえば学術雑誌で査読を通って追試でも確認できて,という状態になれば,いつでもその論文を引用し,間違いを認めて訂正を行います。

 現象がなさそうなことについては,後で述べるように,日々の実験操作で事実上確認してる状態だったりします。

>天羽さんのサイトに名が出ること自体を、メーカーは嫌っているようです。

 これ,前々から気になっていたんですけど,吉岡さんは一体どういう立場で私にあれこれ書き送ってきておられるんでしょうか?。単に趣味が合わないということならそれはそれでいいんですけど。メーカーとはどういうご関係ですか?

 いやね,私の書いたものが原因でどこかの誰かの売り上げに響いていることが事実だとしても,この日本では,他人の権利侵害(それが不法行為と認められるかどうかについては手続きを踏まないと確定しませんが)を理由として法的な請求をすることはできないんですよ。メールを送ることが法的な請求ではないのはもちろんのことなのですが,それなら何でわざわざ中小企業云々を話の中に持ち出しているのかなあ,と引っ掛かったんです。

 以前,私に向かってヒロイズム云々と書いてこられましたけど,ひょっとして吉岡さんご本人が「たとえ消費者をだますような商売をしている中小企業であってもいじめるのはけしからん」という勝手なヒロイズムで行動なさってたりしませんか?

>実験の正誤を検討してください、と頼んでいるわけではありません。
>興味があるかどうか、ということです。

 議論をすり替えているように見えます。

>興味がある人は、すぐその水を入手して自分で確かめようとするだろう、
>というのが、科学をなりわいとする人に対する、私の認識です。

 世の中には,「新奇な現象を発見した」と言ってトンデモ話を持ち込む人が大量にいます。たとえば,未だに相対性理論は間違いだと言って物理学会に文書を送り付ける人だって後を絶ちません。それにいちいち取り合っていては,とても身が持ちません。かといって,そういうトンデモを放置しておくと,別の社会的コストが発生したり,研究者が迷惑を受けることもあります。そこで,現状の科学で分かっている範囲に照らし合わせ,どこが矛盾するか,どういう手順で確認されれば真実と認められるのかということを考えてから,自分がどう関わるか決めることになります。
 「現象が見つかった」と主張しているけどそれが定かではない場合,現象が真実であることをある程度の精度で確認するコストは,言い出しっぺが負担すべきだというのが私の考えです。「新奇な現象が見つかった,これを認めないというなら検証してみろ」と批判する側に要求するのは,典型的な疑似科学信奉者のロジックです。

 興味があるというだけで飛びつくのはただの素人です。話がまともかどうかというスクリーニング位は最初にするものです。主張の内容をチェックして「これが起きるならあれも起きるはず」「これが起きないならあれも起きない」と,全体の整合性を見て判断するんです。

 通常の研究であっても,興味を持ったら次にすることは文献検索と最近の学会発表内容のチェックですよ。全く重複することをやっても論文にならないし,何がどこまでわかっているかというところから,自分が何をどこまでするか決めて調べていくことになりますので。

 今回,すでに実験結果があるということですから,同じ実験を1からするのもばからしいので,どんな実験でどこまで分かっているかをチェックし,それによって,追試に値するかとか,何が足りないかといったことを考えていくことになります。

 最初の実験の詳細を出して欲しい理由はもう1つあります。
 そちらでどういう手順・条件で実験したかという情報なしに,私が水をもらって実験したとしましょう。もし,結果が吉岡さんの主張の通りにならなかった場合,「会社がやったのと条件が違う」「実験の方法や技術に問題がある」といった論争になることが予想されます。もとの実験条件が隠された状態で始めると,この手の論争でいたずらに労力を使うことになります。これは私の杞憂でもなんでもなく,例の常温核融合の騒ぎのときに実際に起こったことです。あのときも,結果は華々しいということばかり宣伝されましたが,実験の詳細は明らかにされず,追試をする側がいちいち条件を振って可能性を潰すということになりました。核融合が起きるとを主張した側は,追試で再現しなかったことについて,条件が違うとか技術が悪いとか言い訳ばっかりしていましたね。でも実験条件の正確な情報は出さなかった。小出しにされる曖昧な実験条件によって振り回された結果,いろんなグループが膨大な人的・物的リソースをつぎ込むことになりました。
 こういう例を知ってるから,私は,自分が何か実験するのであれば,主張の根拠となる最初の実験の詳細を押さえてからにしようと考えているのです。

 私が慎重になってる理由は,水や水溶液に磁場をかけても特に変化は生じない,ということをこれまでさんざん実験して知っているからなんですよ。いわゆる磁気活水器といわれるものは使っていませんけどね。実は,実験屋の必需品としてマグティックスターラーというものがあるんです。磁石がモーターで回転する装置の上にビーカーを置いて,テフロンで覆われた磁石をビーカーの中に入れて,液体をかきまぜるのに使います。これで水溶液を作ったりするんですが,もし磁場で水の界面活性やpHなどが変化するのなら,ガラス棒でかき混ぜたときとスターラーでかき混ぜたときで,いろんな実験で違いが出てこないとおかしいんですね。実験屋は忙しく,毎日世界中でいろんな条件で液体をかき混ぜているわけですから,何か派手な違いがあるなら誰かが必ず気付くはずです。でも,そういう話はこれまでにどこからも出てきてないんですよ。私の普段の実験でも特に異常は見当たりませんでした。
 だから,水に磁場をかけたら性質が変わる,という話をきくと,「じゃあまずは決定的な証拠を出してね,ただし科学的に確認したものを」って言うことになるんです。

>ですから、統計調査をすることで、わざわざミラクルと言わなくても
>誰の目にも明らかになる、と言っているのです。

 じゃあ,その統計結果を,統計の専門家から統計で嘘をついてるなどと突っ込まれない状態にした上で,公表すればいいだけのことです。業者さんのウェブサイトでも吉岡さんのウェブサイトでも十分可能ですよね。

>私は、おっしゃるように、分子単位で考えています。
>H2Oの一つ一つの分子の構造そのものに変化が起きていると考えています。

 考えはわかりました。

どういう実験をすれば直接証拠を出せると予想しておられますか?また,変化が起きている水分子は全体の何%程度と思われますか?変化は永久的ですか?あるいは,一定時間でまた元に戻るような変化ですか?一度処理した水を元に戻すには,どういう操作をすればいいんでしょうか?

 本当に水分子の骨格が変わるなら,私がやってるラマン散乱スペクトルを,実験用超純水と比較すると,分子内振動の振動数シフトとして観測されるはずです。
 あとは,X線や中性子線の散乱で動径分布関数に違いがあるかどうかでもチェックできそうです。

>でも、栄養補給と老廃物の排出は早くなるでしょう。

 その分老化も早くなりそうなのであんまりうれしくないです。

>通常の水とはどういう水か、なかなか難しいですね。
>地球に存在する水は地球磁場の影響を受けています。
>その地球磁場は数千年数万年で大きく変動しています。
>すると、地表の水が切る磁力線の数は、時代によって違うことになります。
>時代によっては、ちょっと磁場を通した方が生命活動にとっていい水になる、
>という、そういう時代もありそうですね。

 母校のお茶の水大の理学部校舎内で磁場を測定したことがあります。上のフロアにNMR分光器が入ったので,漏れ磁場がフォトマルに影響するとまともな測定ができなくなるから,測定器を借りてきてチェックしたのでした。そうしたら,エレベータ付近で地磁気は垂直方向を向いていました。エレベータの枠の鉄柱に沿って弱い自発磁化が生じたのが原因のようです。
 鉄筋の建物の中だと,地磁気程度の磁場は思い掛けない方向にかかっていたりしますね。


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