タイトル | 「理数力」崩壊 日本人の学力はどこまで落ちるのか |
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著者/訳者 | 左巻健男 |
出版社 | 日本実業出版社 |
出版年 | 2001年 |
定価 | 1400円 |
ISBN | 4-534-03261-7 |
ゆとり教育で理科・数学の授業時間が減り、生活科や総合学習の時間でさらに減って、おまけに新指導要領の内容があまりにひどいので、このままでは必要な水準を満たす人材を養成できないのではないか、いやもう既に問題は始まっているという警鐘を鳴らしている本。 人間がものを理解するときには系統的に整理しながら進むものだということを軽視し、内容を減らせば落ちこぼれが減るだろうと短絡的に量を減らしたとしか思えない指導要領と教科書の検定基準の問題について、実例をあげて議論している。本の中で指摘されている問題点としては、例えば、「溶解や状態変化で粒子(分子)モデルはいけない」「岩石は1種類ずつしか扱うな」「周期表は掲載してはいけない」など。相互に関連性のない話題がちょっとずつ出てくる教科書では、読んでも余計にわからなくなるだけだと思うが・・・。 中学校の教科書からイオンの話が無くなったってのも結構ショックである。ただでさえマイナスイオンの怪しげな商売が横行しているときに・・・。これで、水にものが溶けるということの分子描像もすっ飛ばされるのであれば、ますます、何かを溶かしたら摩訶不思議なことが起きるとか、水に情報をっ記憶させるとかいう話が出回って、当サイトのネタには不自由しないが世の中としては困るんじゃないかと。 非常に鋭い指摘だと思ったのが、OECDの調査結果を示した「日本の大人は子どもの科学レベルを非難できるのか」(59ページ)で、この節の中で、「科学、技術に興味、関心はない。にもかかわらず科学技術関連の政策はすんなり受け入れる」「日本の大人の理科の学力は子どもたちに自慢できるものではない」とばっさり結論を出している。 多くの本屋ではこの本は教育書のコーナーに置かれていたが、経済政策やビジネス書のコーナーに置くべき本ではないかと思う。 |