本の紹介と書評など

タイトル 水−この不思議なもの(化学のドレミファ7)
著者/訳者 米山正信
出版社 黎明書房
出版年 2000年
定価 1800円
ISBN 4-654-08037-6

 中学生から高校生を対象とした、水についての解説の本。中学3年生4人が、理科と国語の先生と議論をしながら、水についての理解を深めていくという形式をとっている。

 第I部は「平凡でない水の性質を調べる」で、水が常温付近で3態をとること、蒸発熱や融解熱が大きいこと、温度による密度の異常(4度で最大)、比熱・熱伝導率・粘性・表面張力が大きいことなどが、日常の経験を例として述べられている。第II部は、「水の科学史を探る」で、「万物の根元は水である」(タレス)に始まり、キャヴェンディッシュの水素発見、シェーレによる酸素発見、を経て、水がH2O分子であることまでが書かれている。第III部は「水の身体検査をする」で、水の異常性が水素結合の存在で説明できることが示される。電子レンジで水が加熱できる話もここに書かれている。

 著者が「新装・改訂によせて」で述べているとおり、この本はこれから化学の勉強を始める人にとって役立つ本である。この本に書いてあることだけでは、水について怪しい話が出てきたときに対応できないし、この本だけで止めてしまうと、誤った仮説を立てる可能性もある。ただし、私がこれまで紹介した本の中ではもっともとっつきやすい本なので、理科に苦手意識のある人は、まずこの本から始めるといいだろう。最初に読む本としてはおすすめの1冊である。

 1つ前に紹介した荒田さんの「水を知ろう」が難しいと思う人は、まずこの「水−この不思議なもの」を読んでからとりかかると、無理なく水についての理解をすすめていけると思う。



top pageへ戻る 
本の紹介の目次に戻る

Y.Amo /
当サーバ上のページに関する問い合わせや苦情のメールは公開することがあります。