本の紹介と書評など

タイトル 水を知ろう(岩波ジュニア新書378)
著者/訳者 荒田洋治
出版社 岩波書店
出版年 2001年
定価 780円
ISBN 4-00-500378-8

水に関する一般向け解説書。中学・高校生向けで、非常にとっつきやすく読みやすい本である。

 水の三態、雪の結晶の話や、クラスレートハイドレートの話が紹介されている。また、水と伝染病の話や、ミネラルウォーターの成分分析の話、水と生物の乾燥や低温耐性の話が出ている。

 クラスターの話はについては以下の通り:

 水のクラスターの構造が話題になり、いろいろな場で「クラスターの構造がXXであるから水の性質がYYである」のような議論が行われることがあります。ここで使われるクラスターは、”H2O分子のかたまり”を念頭においたきわめて曖昧模糊とした表現です。しかし、すぐ前で述べたように、限られた種類のH2O分子のかたまりが、いつまでも同じかたちを保って存在することなどありえません。いいかえれば、クラスターの構造そのものが水の物性、機能を支配するという議論は意味がありません。クラスターは、それぞれの実験において設定された条件において出現する結果であり、そのこと自体、水の機能とは何の関係もないと考えるべきです。
 不特定多数のクラスターが、きわめて短時間に離合集散している、いいかえると、時間的にも、空間的にも不均一な水の実態を、実験データをもとにしてミクロな視点から定量的に表現する手段を、まだ現代の科学はもっていません。このような不均一系をどのように解析していくのかは、これからの科学の課題のひとつです。もっとも、何をもってミクロな視点から定量的に表現できたとするかは、科学する人それぞれが設定すべきことです。

 水が情報を記憶する話として、ポリウォーターとパンヴェニストのホメオパシーの話が紹介され、両方の話の問題点がきちんと議論されている。



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Y.Amo /
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