本の紹介と書評など

タイトル 小事典 暮らしの水
著者/訳者 建築設備技術者協会 編
出版社 講談社 ブルーバックス
出版年 2002年8月20日
定価 880
ISBN 4-06-257379-2

 生活に関わる水と、給水・排水設備について、技術士の方々が中心になってまとめた本。現在の、水や水関連の設備の知識の標準的なものについて説明されている。この本は「買い」です。

 まず、おいしい水の条件を引用すると、こんな具合である。(機種依存文字は適宜変更させていただいた)

1)水温が体温に比べて二〇〜二五度C程度低い(一〇〜一五度C)。
2)高度、すなわちカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分の量が、一リットルあたり一〇 〜一〇〇ミリグラム程度含まれている。ミネラル量があまり高いと、苦みを感じる人がいる。
3)溶けている炭酸ガス(遊離炭酸)の量が、一リットルあたり、三〜三〇ミリグラム程度。このような水はさわやかな味を感じるが、遊離炭酸が多すぎると刺激が強くなる。
4)嫌なにおいがない。水源の状況によってかび臭かったり、鉄やマンガンが多いと金気臭を感じる。専門的な尺度としては臭気三度(通常、臭気を感じない程度)以下。

 ワケのわからない酸化還元電位もクラスターも出てこない。とてもわかりやすくてほっとしますね。

 クラスターについては、34頁に、お酒のまろやかさの話として紹介されていますが、「水のクラスターのふるまいや作用については、すべての研究者が認めているわけではありません」としっかりチェックが入っています。まあ、分子線クラスターの西先生の本とか、永山先生の「水と生命」とかに話題として紹介されてしまっているので、それなりの研究者の書いた解説書をあたった結果を反映させると、こういう記述になるんでしょうね。第2版が出るころまでには状況が変わっていることを期待したいです。(ってゆか物質の変化で説明しろってがんばります、はい)

 給水設備のバルブの話とか、いかにして汚水が給水配管にはいらないようにするかとかいった話は非常に身近で、読んでいて勉強になった。何気なく見ている配管にも、実は工夫がこらされているのだと知った。

 ただし、186ページの記述については追加させていただきたい。「ある物質に水が溶けるか溶けないかは、その物質と水分子の間に、水素結合ができるかできないかによって決まります」と書いてあるが、実はこれだけではない。例えば、ジオキサンのように、水分子と水素結合せずに、全濃度領域で混合する物質もあるので。しかし、日常生活で水にものが溶けるかどうかの入門者向け説明としては、まあこんなもんかなとも思う。

 最後の方の著者名リストを見ると・・・おおっ!当サイトからもリンクしているコロージョン・テックの藤井さんも加わっておられるではないですか。やっぱりなあ、というかちょっと感激です。



top pageへ戻る 
本の紹介の目次に戻る

Y.Amo /
当サーバ上のページに関する問い合わせや苦情のメールは公開することがあります。