本の紹介と書評など

タイトル 判・審決例からみた不当表示法
著者/訳者 植木 邦之
出版社 社団法人 商事法務研究会
出版年 1996
定価 2900円
ISBN 4-7857-7007-4

 「不当景品類および不当表示防止法」の規制対象のうち、不当表示の規制がどのように行われてきているかをとりまとめた本である。著者は、公正取引委員会の委員である。

 第6章 誤認創出の手法 III 権威の利用 (1)科学的権威には、以下のように書いてある。

 表示も情報の一種であり、情報には発信者の特定の意図、動機が潜んでいるのが通常なので、情報の受け手はその情報の背後にある意図が問題ないかどうか警戒する。その場合、権威あるとみられる第三者の発言、信用付けは情報の真実性を確認するものとして大きな効果を持つことができる。これを「ハロー効果」と呼ぶこともある。後述する有名人のCM出演も基本的にはこの効果を狙っているものといえよう。
 第三者依存の判断は、高額商品購入の際に起こりやすいものだといわれている。また、商品が粗悪であればあるほど、権威者の言葉で飾ろうとするともいわれる。
 38事件(72頁参照)において、宇宙船に搭載する器機には小数点4〜5桁の精度が要求されるから、このような精密さについて判定しているとみられるアメリカ高級宇宙局(NASA……第三者)の権威に依存して、アポロ宇宙船に搭載されたといって、一般品であっても精度が高いという誤認を発生させようとしているものと考えられる。この種の事例は数が多い。

 ....NASAはやはり重要キーワードらしい。この間会った友人も、NASAの技術を使ったというフレコミの商品セールスを受けたと言っていた。

 (2)社会的権威 の方はこんな具合である。
 商品には、その品質、性能等を定量的に把握できないものがある。このようなときには、社会的権威に頼る手法が用いられることが多い。
(中略)
 推奨は、個人の形のみならず、団体の推奨の形式をとることもあるが、個人等が登場して行う推奨よりも大きな効果をねらったものであるといえる。
 いずれにせよ推奨が行われるとき、それは行われてもいないのにあたかもそれが行われたかのように表示したもの、推奨は行われたが、推奨された事実とは異なったものを推奨されたかのように表示したもの、推奨の内容が不適切であるものに分かれ、いずれも規制の対象となる。この場合、表示の不当性は、専門家の推奨について厳しく批判さるべきであろう。第三者がその判断に依存する度合いが大きいと思われるからである。次いで、無名の人の推奨も厳しく批判されるべきである。無名の人が示すことと同等の可能性が自分にもあると考えさせるからである。有名人の推奨については、それが誤認を生んでいるかどうか慎重に判断しなければならないことが多いであろう。それは製品の知名度を高めるという機能を大きく持ち、誤認を与えると判断できない場合もあるからである。

 取り上げられた事件は115事件、ほぼ全業種にわたっている。どのような広告・表示が違法なのか、具体的な例があるので非常にわかりやすい。

 広告の規制については、公共広告機構という団体があるが、こちらはある程度自主的に広告の質を上げようという団体で、強制力がない。強制力があるのは、法に基づいて審査を行っている公正取引委員会の方である。また、不当景品や不当表示ではないかと思った場合には、公正取引委員会へ報告するとよい。この報告は一般人でもできる。



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